最近のデジタルカメラは、技術の進歩によりオートフォーカスのスピードも上がり、コンマ数秒でフォーカスを合わせてくれます。また、瞳オートフォーカスや、動物のフォーカスなど、日々進歩しているといえます。
しかし、それでもレンジファインダーの速射には及ばない場合があるのです。
なぜ、マニュアルフォーカスのレンジファインダー機ライカが、オートフォーカスを搭載した一眼レフ機よりもスナップ向きと云われるか、ご存知でしたでしょうか?
レンジファインダー使ったことない。
まだまだライカ買ったばかり。
今回は、このような方を対象に、レンジファインダーのフォーカシングの仕組みについて、解説したいと思います。
今さら聞けない!ライカのマニュアルフォーカスの仕組みを丁寧に解説
まず、ライカのレンズの構造を解説します。今回はSummicron 35mm F2.0 A.S.P.Hを例にしていますが、原理は共通ですので、覚えてしまえば、お手持ちの全てのライカM型レンズに応用することが可能です。
レンズの外観を見てみましょう。なにやら数字がたくさん書いてありますね。

レンズはこのように、「絞り」と、フォーカスを合わせるための「ピントリング」、そして「距離計」の3つの表記がされています。
この画像の場合、「絞りF2」、「ピントは5m」に合わせているということです。
さて、詳しくみていきます

↑絞り値が「F2」の場合、距離計の「2」の数字を参照します。そのときのピントリングにある数字がフォーカスが合う距離です。この例の場合「5」という数字があるので、5mにぴったりピントが合うということになります。
絞り値F8にしたら、フォーカスが合うのは?
続いて、絞り値をF8にしてみましょう。

↑絞り値が「F8」になったのを確認したら、先ほどの要領で、今度は距離計「8」の数字を探してみましょう。そうすると、「8」の数字が左右に2つあることが分かります。
左が近接端、右が望遠端の距離を表しており、この2つの「8」の数字の間の距離にピントが合うということになるのです。
ピントリングで距離を確認すると、左の近接端は「2mと3m」のちょうど中間あたり。右の望遠端は「無限遠である∞マーク」指しています。つまり「2.5m付近〜無限遠」の距離にフォーカスが合うということになります。
さらに、絞りF16でも検証します。
さらに、もっと違うパターンでも見ていきましょう。次は、絞りF16です。

F16まで絞って、先ほどと同じように距離計を見てみます。すると、さらにフォーカス距離が広がりました。「1.2m〜無限遠」までピントが合うと書いてあります。
なんと、ほとんど、パンフォーカスとなりました。
そうなんです。これがレンジファインダーの速射のカラクリなんです。ピントリングと距離計を駆使して、あらかじめピントが合う距離を定めておく。
そうすると、目の前にシャッターチャンスが訪れた際、フォーカスせずにシャッターが切れるのです。時間にしてわずか0秒。合焦しないとシャッターが切れない一眼レフと違い、コンマ数秒でもライカのほうが早くシャッターが切れるんです。これがスナップシューターたる所以です。
この速射は広角レンズであるほど、被写界深度が深くとれるため有効になります。
28mmや、35mmがスナップ向きと云われるのはこういう理由があるんですね。
では、望遠レンズでどうなるか?検証しましょう。望遠レンズになればなるほど被写界深度が浅く、ボケが多くなりますよね。
つぎは、90mmレンズで検証
次に、中望遠のElmarit 90mm F2.8を持ち出してきました。

絞り、ピントリング、距離計という構造は、Summicron 35mm F2.0 A.S.P.Hと全く同じです。
この画像の場合、絞り値は「F2.8」、フォーカス距離は「4m」になっています。
絞りを、F8にしてみました。

すると、どうでしょう?
あれ、僅かに4m前後の幅が追加されたのみですね。
さらに、F22まで絞りました。

近接距離が「3m」に掛かりましたが、望遠端は「7m」まで届きません。目測6.5mといったところでしょうか。
90mmレンズですと、F22まで絞っても、「3〜6.5m」ほどしかピントが合わないということになります。
被写界深度が浅く、これではスナップで使うのは難しいでしょう。
まとめ カルティエブレッソンも、絞りF8、ピント距離5mでスナップをしていた(らしい)

まさに、アンリ•カルティエ•ブレッソン設定がこちらです。35mmレンズの場合、絞りF8だと、約2.5m〜無限遠までピントがあった状態となります。
フレーミングだけして、あとはパシャパシャシャッターを切っていくだけです。
場合によっては、ノーファインダーでシャッターボタンを押すだけです。なんと簡単なのでしょう。
いかがでしたでしょうか?これがライカのスナップシューティングの仕組みです。
もちろん、ポートレートのようなボケを使った表現をするには、ちゃんとピントを合わせないとダメですが、街撮りや旅行で軽快にスナップするには、M型ライカはとてもおすすめです。
いつもと違うカメラライフを楽しんでみてはいかがですか。
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