【レビュー】Leica M10 一年使用レビュー

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Leica M10 Leica M10
Leica M10

常に持ち出したくなる傑作

まさにマスターピースとはこのこと。

Leica M8のデジタルから、Leica M9、Leica M10の3台のデジタルライカを使ってみて思うことは、
デジタルライカのひとつの完成系をみたと思う。

(実際には、M8→M10と購入し、その後M9を迎え入れた。この変遷については、またの機会に書こうと思う。)

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Leica M10の魅力

Leica X1 エルマリート36mm

Leica M10といえば、Wi-Fi、連射という現代の機能を手に入れたし、個人的にはほとんど使うことは無いものの、ライブビューによりノクチルックス等の開放をジャスピンで合わせられること。
使い勝手は、まさに現代的。申し分ないと思う。

また、デジタルライカシリーズを多くのライカファンが忌避する原因となっていた“厚み”問題にも決着がつき、ようやく伝統的なフィルムライカとほぼ同一の厚みを手に入れた。

これは多くのフィルムライカユーザーを、デジタルライカの世界へ引き入れるきっかけになったことは間違いないだろう。

それに加えて、数々のバリエーションも外せない。
より静音シャッターとなった「Leica M10‐P」。背面液晶を外した「Leica M10‐D」。そして、最近発売になった第三世代モノクロームの「Leica M10 モノクローム」。
さらに、4000万画素センサーを搭載するとうわさの「Leica M10-R」。
限定モデルを除いたLeica M10の基本バリエーションだけでも、2020年1月時点で、4機種から選択できるという贅沢っぷり。

ユーザーのお財布事情と求めている機能で、さまざまなニーズに応えている、ライカ社の心意気を感じるモデルだ。

さて、前置きが長くなったが、そんなLeica M型デジタルの傑作とも言うべき、Leica M10の魅力について触れていきたいと思う。

沈胴エルマーを装備したLeica M10 (Leica X1 エルマリート28mm F2.8 )
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70年近く変わらない操作性

史上最高のカメラと名高いLeica M3の発売から約70年。時代の流れをうけデジタルになったものの、レンジファインダーの基本構造を受け継ぎ、操作方法自体がほぼ変わらないというのは感慨深い。

それゆえに、M型ライカを使ったことがあるユーザーなら、誰しもが同じ操作感・フィーリングで撮影を楽しむことができる。

そしてやはり、Leica M3と同じ厚みというのは、他のデジタルライカと比較してたった2mmの薄型化なのだが、手に収まるフィット感がまったく別のそれになる。

これはLeica M10を使っているときに薄いな。と感じるというよりむしろ、Leica M8、M9をひさしぶりに使ったときに分厚い・・と感じるほうが、感覚に近い表現かもしれない。

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所有することの、よろこび

もちろん、写真を撮る写真機なのだが、ライカはそれそのものを所有することが情緒的な価値になる。

所有欲を満たしてくれる、といったようなコレクション性だけでなくて、常に触れて、外に持ち出したくなる。無意味にシャッターを切る感触を確かめたくなる。自分の右脳を刺激して、常に自分の感性をアップデートしてくれる。そんな存在だ。

さて、ここまで良い点ばかりを並べたのだが、Leica M10の残念なポイントについても考察したい。

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シャッター音にまだまだ改善の余地あり

Leica M8、Leica M9を所有している立場からすると、シャッター音自体はだいぶ消音に抑えられている。それは紛れもない事実である。ただし、M8、M9は分離チャージが搭載されていた。この2機種については「ジー」というシャッター幕の巻き上げ音がとても大きく、スナップシューターというライカのコンセプトからすると自分の存在を相手に知られてしまう致命的なものなのだが、分離チャージを設定することによってシャッターを切る→巻き上げるという一連の流れを分離することができたのだ。つまり、シャッターを切るときはほぼ無音で、その場を離れた後にシャッターボタンから指を離し、「ジー」と巻き上げるというテクニックが使えた。しかし、Leica M10になりこの機能自体がなくなり、「カショッ」というシャッター音が、切った瞬間に鳴り響くようになってしまった。

もちろん、このシャッターを押すフィーリングは最高だ。しかし、静寂な環境下で、高音がキーンと鳴り響くことがあり、シャッターを押したことが結構な確率で相手に伝わる。これは使えば使うほど、気になってしまうポイントである。後継機のLeica M10-Pではこのシャッター音が極めて小さく抑えられており、実機を触らせてもらうとなんとも心地よいのだが、このために数十万円を出して買い換えるというところまでなかなか踏みきれていないのが現実だ。

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せっかくの薄さが、ケースをつけると台無しに

これは元も子もないのだが、僕はライカ純正のM10ケースを付けている。仕事のない日に外出するときは(飲み会のときを除いて)ほぼ毎回首から下げるか、肩に掛けるスタイルなので、必ずケースはするようにしている。

そもそもライカ純正ケースは背面液晶をあえて隠すような設計になっていて、いちいち背面液晶で確認する行為を強制的に遮断し、撮影する行為そのものに集中することができるという粋なアイテムだ。背面液晶を自らわざわざ隠すという芸当が日本メーカーにできるだろうか?(最近、富士フィルムがX-PRO3でやってのけたのでこれは称賛を贈りたい)

とかく非常に良いオプションアイテムなのだが、問題は装着時に厚みが発生するということだ。若干の突起によりホールド性は向上するのだが、Leica M10最大の特徴であるフィルムライカと同等の厚みが、ケースの厚みによって相殺されてしまうのだ。むしろ厚みとしてはプラスだ。これはなんとも歯がゆい気持ちになる。また、ケース横面に加えて、底面がかなり厚いことももう一つの残念ポイントである。おそらく4mm程度あると思われ、背格好が非常に高くなってしまう。それによって黄金比が崩れるのか、なんとも言えない残念なビジュアルになってしまう。Leica M10 の本当の良さを味わうにはやはり裸のまま使うのが一番だ。

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100万のデジカメを、乱雑に扱えない

先のケースにも関わるのだが、最後の残念ポイント。これは価格に起因するものだ。Leica M10は、やはり100万円級のデジタルカメラ。中古でも60万円前後。この高価格アイテムを乱雑に扱えないこと。気持ち的なものなのだが、これが実は最大のネックである。

僕の一番のお気に入りアイテムであることは間違いないのだけれども、実践でガシガシ、ぶつかり凹み、汚れなんて気にしないぜ!というモチベーションには、どうしてもなれないのだ。リセールバリューを気にしてか、はたまた自分が臆病なだけなのか、家では防湿庫で常に眠っている。いざ写真撮影で使うことは馴染んではきているものの、どうしても壊してはいけない、傷つけてはいけないという意識が頭の片隅でよぎり、1年使い続けた今でも、身体の一部になっている感覚はまだ得られていない。

しかしながら、この感覚というのはLeica M10 に限ったことではなく、僕が所有するライカすべてに言えることではある。唯一、細かいことは気にせず使えるのは、ファインダーも曇って、すり傷だらけのボロボロのM3だったりする。

そういう観点からは、フィルムカメラが僕には一番合っているのかもしれない。

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まとめ

以上、いろいろ述べたものの総じて買って満足。本当に良い買い物だったと思っている。ライカは人生を彩りあるものにしてくれるカメラだと思っている。「今」という瞬間は一生戻らない。代わり映えのしない何気ない毎日だったとしても、たまたま撮った写真を後から見返すと、日常がすごく良い思い出として再生されることも多い。だとしたら、その瞬間を最高の写真機で残すことは道理にかなっているし、だとしたら買うのは早いほうがいい。

旅行などの際に、積極的に持ち出すのはやはりLeica M10が最も多い。シャッター枚数も10,000回をゆうに超えている。ぜひともこれからライカを買おうとするひとに全力でおすすめしたい機種である。写し出される日常がとても彩りある芸術の世界に変わることを体感できる。きっと、ライカという世界観の虜になるはずである。

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