今回は、ズミクロン新旧対決ということで、Apo-Summicron M50mm F2.0と沈胴ズミクロンL50mmをの比較をお送りしたいと思います。
「ズミクロン」レンズの歴史
ズミクロン50mmの歴史は古く、M型ライカの起源Leica M3が発売される1年前の1953年に遡ります。今からちょうど70年前です。最短撮影距離は1メートル。沈胴式のズミクロンは、F2のレンズとして登場しました。f値2〜16、φ39は、最新のApo-Summicron M50mm F2.0までも継承されています。
この第一世代と言われるズミクロンは、6群7枚で構成された「沈胴式」のほか、沈胴機能がオミットされた「固定鏡胴」。そして、最短48cmまで寄れる「DR(Dual Range」とラインナップされています。
1969年、Leica M4の発売とともに発売された“2nd”。レンズ構成が5群6枚とガウスタイプに変更され、最短撮影距離も0.7mになりました。
1979年発売された“3rd”は、レンズ構成が4群6枚に変更され、オーソドックスなズミクロンとなりました。現代ボディと合わせても通用する描写力を発揮します。
1994年にフード組み込み式になった“4th”は、APOを冠さない通常「ズミクロン」銘では現行モデルとなっております。2006年のLeica M8発売とともに6bitコードも追加されています。
そして、アポクロマートという技術により各種収差を完璧に抑えた「アポズミクロン」 に繋がります。発売は2012年ですが10年経った2023年現在でも、M型50mmの最高峰レンズの一角として君臨しています。
では、この70年前のズミクロンと、現行のアポズミクロンでは、どのような描写の差があるのでしょうか。早速検証してみましょう。
検証環境メモ
- 機種:Leica SL
- シャッタースピード 1/60 固定
- 絞り優先
- ISO:AUTO (カメラ側にてオートで調整)
- DNG撮影後、キャプチャーワンにてJpeg現像。補正無し。
ズミクロン頂上対決 (開放)
今回は、Leica SLにマウントアダプターを介して、2つのレンズを検証しています。
F値は、開放とF5.6で撮影しました。両者の描写がどのようになるのか、御覧ください。
※電子シャッターで使ったため、意図せずフリッカーが入っております。
沈胴Summicron L50mm F2.0 開放

Apo-Summicron M50mm F2.0

まずは開放の等倍比較です。
等倍でも描写の違いがすぐに分かりますね。
ピントは手前の「りんご」です。
上の沈胴Summicron L50mm F2.0では、中心部の花びらの部分もやわらかくボケています。また周辺に配したガンダムやLeica M3もボケているのが分かりますね。現代レンズのボケとも違い、モヤがかかったような、或いはベールをまとったような、独特のボケ感です。これがオールドレンズっぽさですね。
それぞれを拡大、比較してみましょう。
左が沈胴Summicron L50mm F2.0で、右がApo-Summicron M50mm F2.0です。
中心部


周辺部


やはりモノクロ時代に作られたレンズだけあって、沈胴ズミクロンは、発色が甘いですね。周辺部は流れてしまって、非常にやわらかい描写になっています。これが“味”なんですけどね。
Apo-Summicron M50mm F2.0の周辺解像度は、触れるまでもありませんが、恐るべしです。
ズミクロン頂上対決 (F5.6)
それでは、絞りを変えてみましょう。
どのように描写に変化があるんでしょうか。
沈胴Summicron L50mm F2.0 絞りF5.6

Apo-Summicron M50mm F2.0 絞りF5.6

お!なんと、あんなにふわふわだった沈胴ズミクロンの描写が絞ることによって、見違えたではありませんか。オールドレンズとはいえライカのレンズです。当時空気まで写ると言われたズミクロンの本領発揮ですね。
発色の甘さこそあるものの、パット見の印象ではアポズミクロンに迫る勢いです。
細かく検証しましょう。
左が沈胴Summicron L50mm F2.0で、右がApo-Summicron M50mm F2.0です。
中心部


周辺部


周辺部こそ発色や解像度の甘さが残るものの、中央部はかなりいい勝負になってきたのではないでしょうか?
流石に、Apo-Summicron M50mm F2.0と比較してしまうと、柔らかさが出ておりますが、これも味ですね。あえてふんわりしたイメージに仕上げたいときには、沈胴ズミクロンをチョイスするのも正解ですね。
まとめ
- 言うまでもなく、性能はApo-Summicron M50mm F2.0だが、遊びを楽しむなら沈胴ズミクロン。
- 開放の甘い描写と、絞ったときのギャップがすごいレンズです。F5.6あたりまで絞ると、現代レンズとも比肩できるような解像性能を発揮。1本で2度たのしめるレンズ。
- どこかにオールドレンズならではの甘さや柔らかさを残しており、独特の描写を演出できる。
いかがでしょうか。同じズミクロンでも70年の進化を感じさせる検証結果になりました。ライカ王道のレンズ。ご自身のお好みに合わせて、選ぶのも楽しいですね。
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