エルマリート VS アポズミクロン
今回の記事では、前回予告していたエルマリート90mmとアポズミクロン50mmの比較検証をお送りします。
アポズミクロンがあれば、望遠レンズは不要なのか?
Apo-Summicron M50mm F2.0の超解像度描写をトリミングすれば、望遠レンズはいらないんじゃないんだろうか?ライカユーザーの方々なら気になるであろう、この疑問に答えるべく、検証をしてきました。
検証環境について
さて、今回検証を行った環境は以下のような形です。
・使用レンズ: Apo-Summicron M50mm F2.0、Elmarit 90mm F2.8
・使用ボディ: Leica M10-R
・絞り値を、開放→F5.6→最小の3パターンにて比較します。シャッタースピードとISOはオートでボディに任せることにします。
開放描写の比較
まずは、開放描写の比較からです。


どうでしょう?わかりにくいですね。ふたつの写真を横並びに比較してみます。
左がApo-Summicron M50mm F2.0、右がElmarit 90mm F2.8です。

2枚の写真は、まったく同じ位置から撮っています。
50mmと90mmだと、ここまで画角に差があります。左のApo-Summicron M50mm F2.0のほうが現代的な描写。流石というべき色表現です。一方、右のElmarit 90mm F2.8ですが、こうして比べてみるとオールドレンズっぽい描写ですね。色乗りはさらっと淡白。コントラストは薄め。そしてハイライトも飛びがちのような印象ではないでしょうか。
次に、中心部と、周辺部をそれぞれ拡大してみてみます。
中心部の拡大比較

レンズ中央部、三角コーンを拡大してみました。
うーん、いい勝負してますね。
左のApo-Summicron M50mm F2.0のほうが陰影がしっかりしています。階調がなだらかで、より写実的というべきでしょうか。一方、右のElmarit 90mm F2.8はコントラストが薄く、その分、輪郭がくっきりと描写しています。どちらかというと絵画のような印象を受けます。
この部分だけの写真なら、Elmarit 90mm F2.8のほうが良さそうです。
周辺部の拡大描写

次にレンズ周辺部の比較です。
やはり、階調がなだらかなのが右のApo-Summicron M50mm F2.0。落ち着いた描写です。葉っぱはやや潰れてるようにも見えて、ごちゃごちゃしていますね。
一方、色が淡白ではっきりとしているのが右のElmarit 90mm F2.8です。葉っぱの一枚一枚の輪郭もくっきりと描写しています。
Apo-Summicron M50mm F2.0のほうが、微細な陰影を表現しているからなのか、悪く言うとぼやっとした眠い印象を受けます。
こちらも拡大部分では、Elmarit 90mm F2.8のほうが良さそうです。
同一画角で比較
アポズミクロンのほうをトリミングし、同一画角で比べてみます。
すると、おや・・
Apo-Summicron M50mm F2.0のほうが、全体的に色乗りがきれいで、美しい写真になりますね。
特に、中央部の建物の屋根を比較すると、右のElmarit 90mm F2.8のほうはハイライトが白飛びしている感じです。下部の湖面のゆらぎも、ハイライトが強めに出ています。
細かい部分の拡大写真で見たときには、エルマリート90mmのほうが、はっきりと描写をしていましたが、写真全体を1枚の描写として捉えると、なぜかApo-Summicron M50mm F2.0のほうが完成度が高い印象です。
2つを比較すると、僕はApo-Summicron M50mm F2.0の描写のほうが好みでした。
どうやら拡大時にはっきりとすればいい写真というわけではないようです。Apo-Summicron M50mm F2.0は引きで美しく見えるように、設計されているんでしょうか。
みなさんはどのように感じられましたでしょうか?続いて、他の絞り値でも検証します。
絞りF5.6の比較
絞り値をF5.6、最小絞りでも検証してみます。並び順は、上の順序に倣っています。
(下記LightroomClassicの表記は、揺れていますが、F5.6です)



F5.6まで絞ると、Elmarit 90mm F2.8も一気に落ち着いた印象になります。開放で見られた滲みやハイライトの飛びが軽減され、写真としての完成度が上がる、そんな印象です。
Elmarit 90mm F2.8は、少し絞ると性能がぐんと上がりますね。どうやらF4〜8くらいが最も性能が上がりそうです。
最小絞り(F16 vs F22)
最後に、最小絞りも検証してみます。Apo-Summicron M50mm F2.0はF16、Elmarit 90mm F2.8はF22となります。



最小絞りまでくると、ISOが上がるせいなのか、どちらもちらつきが気になります。
本日は曇天だったため、絞りすぎるとレンズ本来の性能を十分に発揮できなさそうな結果となりました。
まとめ
超解像度のApo-Summicron M50mm F2.0は、エルマリート90mmのポジションすら脅かすモンスターレンズだった。
今回あえて、不要とまでは言及しませんが、解像性能だけを見れば、その立場を脅かす存在であることは間違いないといえるでしょう。つまるところ、Apo-Summicron M50mm F2.0と、最近発売となったLeica M11の6000万画素のトリミングを使えば、疑似望遠レンズの出来上がりといえます。この2つさえあれば、他のレンズに目が行かず、高コスパでいっちょあがれるではないでしょうか。理論的には。恐らくそこまでエキストリームな方だと、結局他のレンズを複数所有していると思われますが(笑)
最後は、レンズの描写傾向は個々人の好みですので、低コントラスト、蛋白がお好みであれば、エルマリートという選択肢は十分にあろうかと思います。
個人的には、Elmarit 90mm F2.8よりも、すこし頑張ってApo-Summicron 90mmに行ったほうが、幸せになれる気がします。
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