ついにやってしまいます。
単焦点vsズームの頂上決戦…!
M型最強レンズ「Apo-Summicron M50mm F2.0」と、相対するはライカ純正の標準万能ズームレンズ「VARIO-ELMARIT-SL f2.8-4/24-90mm ASPH.」の描写比較企画です。
アポズミクロンといえば、いわずと知れたM型最高峰レンズ。わずか300gの軽量ボディから得られる描写は唯一無二。お値段100万円超え&解像度キレッキレのモンスターレンズです。一方のバリオ・エルマリートはSLシリーズの標準ズームレンズ。標準といっても値段は70万円。
性質の違うこの2本を比較したレビューは今まで無かったんじゃないでしょうか。
検証環境メモ
- ボディ:Leica SL(typ601)
- シャッタースピード 1/60 固定
- 絞り優先モードでF値ごとに検証
- 焦点距離 50mm
- ISO:AUTO (カメラ側にてオートで調整)
- DNG撮影後、キャプチャーワンにてJpeg現像。補正無し。
最強レンズ対決スタート 開放F値
それでは検証を初めていきます。まずは開放F値で検証です。
Apo-Summicron M50mm F2.0 開放F2.0
![](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/bde88473ac3c4c34187ffd61eef83c9f.jpg)
VARIO-ELMARIT-SL f2.8-4/24-90mm ASPH. 焦点距離50mm 開放f3.6
![VARIO-ELMARIT-SL f2.8-4/24-90mm ASPH. 焦点距離50mm 開放f3.6](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/535173d18504ba2a838e8bf59b3d83ac.jpg)
両者を横並びで比較です。
![](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/c3a5a67b167fa17d853f4dca5b86857c.png)
まずは開放の等倍比較。開放といっても、VARIO-ELMARIT-SL f2.8-4/24-90mm ASPH.のほうは、F3.6になりますので、印象は違います。
そして、ご覧のとおり、発色の傾向がまったく別物ですね。Apo-Summicron M50mm がグリーン寄りです。背景ボケも相まって、立体感がすさまじいです。これぞライカの描写という味が感じられます。
VARIO-ELMARIT-SL 24-90mmはマゼンタ寄りでしょうか。彩度が高めで色鮮やかに感じられます。全体的にクリアでいかにも現代的なレンズという描写です。
2つの描写傾向が違うことに驚きです。
拡大して比較しましょう。
中心部
![](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/f4dd74956a24ac3fb91049069df40e9e.png)
![](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/fdf4e210321bbe9787efeaba4bfd14df.png)
左:Apo-Summicron M50mm F2.0 右:VARIO-ELMARIT-SL f2.8-4/24-90mm ASPH.
中央部のりんごを見ると、バリオエルマリートのほうが色乗りがよいですね。輪郭がはっきりと描写しているような気がします。アポズミクロンのほうが被写界深度が浅いので、ボケているとも言えますね。意外にも、アポズミクロンの方が柔らかい雰囲気ではないでしょうか?
周辺部
![](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/28add08ba3e82e94dcb5fc769eec305e.png)
![](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/2b245dd6da4e343929a7cc3c1ed72fd4.png)
左:Apo-Summicron M50mm F2.0 右:VARIO-ELMARIT-SL f2.8-4/24-90mm ASPH.
周辺部に配したガンダムを比べてみると、アポズミクロンのほうが周辺減光によりトーンが暗めに出ている印象です。
ガンダムの表面の文字を比べてみると、アポズミクロンでは、はっきりと視認することができます。F2開放にも関わらず、解像度恐るべしです。
ライカM3を比較したショットでは、アポズミクロンのほうがボケを感じます。
最強レンズ対決 F5.6
次いで、絞り値をF5.6にして、比較してみましょう。
Apo-Summicron M50mm F2.0
![](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/0dac228fa099bab792b283671a07305e.jpg)
VARIO-ELMARIT-SL f2.8-4/24-90mm ASPH.
![](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/85931317ff49bde553adae1bcba0f927.jpg)
![](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/0dac228fa099bab792b283671a07305e.jpg)
![](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/85931317ff49bde553adae1bcba0f927.jpg)
2枚の印象が近づいた気がします。Apo-Summicron M50mm F2.0は周辺減光がなくなりました。絞るとアポズミクロンのほうが、色に深みが出ています。ライカの味ですね。
拡大比較です。
中心部
![F5.6](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/4926c67dfb9a07af3d318d8594101d29.png)
![F5.6](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/085fe5de0e61c7ab03829e131089d956.png)
左:Apo-Summicron M50mm F2.0 右:VARIO-ELMARIT-SL f2.8-4/24-90mm ASPH.
F5.6で拡大してみました。どうでしょう。
中央部のりんごでは、もはや違いが分からないと思います。わずかにバリオエルマリートの方が赤の発色が強いです。
菜の花に目を移してみると、アポズミクロンのほうが微細な差異まで表現しています。菜の花の花びらや蕾まで解像しており、密度がすごいです。バリオ・エルマリートはハイライトが飛んでしまっていますね。
周辺部
![F5.6](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/94a091421f56c5775cc6ba91e8060b61.png)
![F5.6](https://leica-photograph.info/wp-content/uploads/2023/04/485a95d909ee6bc8f32b815aa38285c7.png)
左:Apo-Summicron M50mm F2.0 右:VARIO-ELMARIT-SL f2.8-4/24-90mm ASPH.
ガンダムの描写や椅子の座面の印象が違います。バリオ・エルマリートのほうが、細かな線がぼやけてしまっており、やわらかな印象になっていますね。
F5.6では、アポズミクロンが優位といえそうです。
まとめ
本日のまとめです。
- 発色傾向が異なり、Apo-Summicron M50mm F2.0は渋くしっとり。いかにもライカらしい仕上がりに
- VARIO-ELMARIT-SL f2.8-4/24-90mm ASPH.は明るく彩度高めの印象。現代レンズらしいクリアな描写
- F5.6まで絞るとApo-Summicron M50mm が優位だが、開放F2とF3.6の比較では、評価が難しい。それほどまでにVARIO-ELMARIT-SL f2.8-4/24-90mm ASPH.の性能が高い
単焦点とズームレンズの頂上対決は、Apo-Summicron M50mm F2.0の一人勝ちになるかと思いきや、そうとも言い切れない結果になりました。
Apo-Summicron M50mm F2.0は絞り開放F2.0とF5.6で仕上がりの印象がガラッと変わりましたが、VARIO-ELMARIT-SL f2.8-4/24-90mm ASPH.は開放F値が3.6とやや暗いため、開放と絞りで仕上がりに大差がない結果でした。
どちらが個人的に好みかと言われればApo-Summicron M50mm F2.0と答えると思います。
しかし、今回は50mmの焦点距離で比較しましたが、24~90mmまで可変できるズームレンズはあらゆる場面に対応でき、あたりまえですが万能です。この描写クオリティでズーミングできると考えると、VARIO-ELMARIT-SL f2.8-4/24-90mm ASPH.はとんでもない可能性を秘めているレンズだとあらためて感じるそんな検証となりました。
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